中学生が読む『ふうか色々人生』|第2回
「世界の人と対戦しました」
2020年4月2日、午前9時54分。
病室で暮らす中学3年生のふうかちゃんは、Twitterにそう書き、動画も投稿した。
世界の人と対戦する。どこに住む相手なのか、どんな勝負になったのか。投稿の言葉だけでは分からない。それでも、病室にいるふうかちゃんが、画面を通して外の世界とつながっていたことは伝わってくる。
この日の朝、最初の投稿は「おきた」。
その6分後には「このパーカーかわいい」。
目に留まった服のことをつぶやき、ゲームで誰かと対戦する。病室で過ごす一日にも、いろいろな楽しみがある。
午後3時3分には、こんな報告もあった。
「スコーンたべた
おいしかった」
短いけれど、なんだかうれしくなる言葉だ。
夕方は「YouTube 見よっと」。続いて「Kindle で漫画見よっと」。
そして午後7時8分、ふうかちゃんはまたゲームのことを書いた。
「アプリのマリオカート誰か対戦しない?」
朝は「世界の人と対戦しました」。夜は「誰か対戦しない?」。
実際に誰かが応えてくれたかどうかは分からない。でも、ふうかちゃんの言葉は、病室の外にいる誰かへ向けられていた。
好きなものを見つけること。おいしいと感じること。誰かと遊ぼうと声をかけること。
「精一杯生きる」というのは、特別なことを成し遂げる日だけの話ではないのかもしれない。
この日のふうかちゃんは、病室から世界へ、いくつもの言葉を届けていた。
この作品は、ふうかちゃんが2020年4月2日に残した投稿をもとにした物語です。引用した言葉は原文の表記を保ち、会話・対戦結果・本人の内心など、確認できないことを事実として創作していません。
