完全な親なんか、人間の中には存在しない

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考えてもごらん。
君はもっと幼かった頃は、お父さんお母さんというのは、何でもできて何でも知っている全知全能の人みたいに思ってたかもしれないけど、そんなことあるわけないという当たり前のことについてだ。
だって、君の親は、君が生まれることで、初めて親になったんだ。
生まれた時から親だったわけじゃないんだ。
君の親になる前は、君と同じように、人生についてあれこれ悩み、あれこれ迷う、普通の人だったんだ。
そんな普通の人が、子供が生まれたからって、いきなり全知全能になるわけがないじゃないか。
「親の役割」なんて言いながら、彼ら自身、親になったのは人生で初めての経験なんだから、君の育て方だってよくわからなくて、毎日毎日迷っているんだ。
そう思って、そんなふうに彼らのことを見てごらん。
うるさいばかりのようなお母さんも、なんだ私と同じだなって、ちょっと可愛く見えてこないか。

じっさい、完全な親なんか、人間の中には存在しないんだ。
完全な親であることができるのは、動物の親だけだ。
なぜなら、彼らの目的は生命を全うすることだけだからだ。
でも、人間はそうじゃない。
生命としての人生をどういうふうに生きるのか、それを考えてしまうからだ。
人生の真実とは何なのか、死ぬまで人は考えているのだから、その限りすべての人間は不完全だ。
どうして君の親ばかりが完全であるはずがあるだろう。

『14歳からの哲学』池田晶子

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