長所と短所

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知識とか技能というような、いわば外面的な事柄については、一般的には短所を補うというよりも、むしろ長所を伸ばす方が、よくはないかと考えるのです。
ところがこれに対して、自分の性格というような、内面的な問題になりますと、私は、長所を伸ばそうとするよりも、むしろまず欠点を矯正することから始めるのが、よくはないかと考えるのです。

そもそも精神というものは、それが真に伸びるためには、必ずや何らかの意味において、一種の否定を通らねばなりません。
すなわち、この否定という浄化作用、すなわち自己反省というものを通らずに伸びたものは、精神としては真に伸びたのではなくて、かえって度の過ぎたものとして、結局欠点になるわけです。
すなわち人間の性格上の問題としては、自分の欠点の反省して、これを除くという努力が、実はそのまま、長所を伸ばすということになるわけです。
すなわち精神界にあっては、長所と短所は別物ではなくて、同一物であるが、ただそれが反省によって浄められるか否か、ただそれだけの相違にすぎないというわけです。

『修身教授録』森信三

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