救い

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本当のことというのは、本当だと認められるから本当なのであって、本当だと認められないことは本当ではない、ウソである。
それで、本当ではないウソのことというのは、認められるのではなく信じられることになる。
人がそれを信じるのは、それがウソだからである。
ウソだからこそ、人はそれを信じなければならない。
ウソではない本当のことなら、人は信じる必要がない。
認めればすむだけだ。

したがって、ウソのことでも信じられる人は救われているというのは、やはりウソで、ウソのことが人を救うわけがないのである。
人を救うことができるのは、本当のことだけだ。
本当のことは、本当だからこそ、人を救うのである。

(略)

人生の諸事、誰にも困難はあるけれども、困難を事実とまず認めるのでなければ、困難はいつまでも困難のままである。
困難を事実と認めないから、逃げる、耐える、諦めるという否定的な態度になるのであって、それらが依然として苦しみであることは、本人が一番よくわかっていることのはずだ。

困難を事実と認めてしまえば、あとは努力するしかないのだから、この努力することそれ自体が、困難からの救いといえば、まあ救いなのである。

『残酷人生論』池田晶子

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