万民の上に位するものは、わが身を慎み品行を正しくし、驕りを戒めて節約に努め、自分の職務に励んで人民の手本となり、人民がその仕事ぶりの苦しさを気の毒に思うようでなければ政治が行き届かないものだ。
新しい政治は始まったばかりである。それなのに万民の上に立つ者が豪邸を構え、高価な衣服で身を飾り、美しい愛人にうつつを抜かし、私財を増やそうとしているようでは維新の大理想は実現できない。
今のような状況では、戊辰の義戦が、まるで薩長の利益を得るために行われたとしか言いようのない結果になっており、天下に対し、戦死者に対して面目が立たない。
翁はこのように言われ、しきりに涙を流されるのであった。
『南洲翁遺訓』西郷隆盛
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