自分がよければそれでいい?

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人が何かをするということは、必ず自分にとってよいと思われることをするもので、悪いと思われることをするはずがない。
殺人や売春をする人だって、そうすることが自分にとってよいと思われるからするのであって、悪いと思っていたらするはずがない。
ところで、この時、その人にはそれがよいと思われることなのであって、それが本当によいことなのかどうかをその人は知らない。
その時の衝動や欲望に従って行為しているだけで、考える精神によって判断されたことではないからだ。
だから、その人はよいと思っているのだけれど、本当はそれはすごく悪いことかもしれないわけだ。
だとしたら、悪いことをすることが、どうして自分によいことであるはずがあるだろう。

つまり、その人は、悪いことを悪いことだと知らないということだ。
悪いことは、自分にとって悪いことだと知らないからこそ、悪いことをするわけだ。
それを食べれば病気になることを知っていて、わざわざ食べる人がいないように、自分に悪いと知っているなら、わざわざする人はいないはずだ。
だから、悪いことをする人は、それは本当は悪いことだと知らずに、よいことだと間違えて悪いことをしているということなんだ。

いや、悪いと知っているからこそ、それをしてみたくなるんだという人もいるかもしれない。
しかし、悪いと本当に知っているなら、悪いことをするはずがない。
ちょっとワルぶってみたいというだけのことだろう。
やっぱりその人もそれを悪いとは本当は知らないということなんだ。
本当には知らないことを知るためにはどうすればいいか。
もう言うまでもない、精神によって、考えるんだね。

『14歳からの哲学』池田晶子

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