本当に生きるということ(1)

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人は、何でも、「思う」ことができる。
これは本当に不思議なことだ。
これが自由の原点だ。
人生はつまらないものだと思えば、人生はつまらないものになり、人生は素晴らしいものだと思えば、人生は素晴らしいものになる。
何もかも思った通りになる。
人生は、自分が思った通りの人生になっている。
人は、思うことで、自分の運命を自由に想像することができるんだ。
これは、なんてすばらしく、かつ、なんて厳しいことだろう。

素晴らしいということは、ただ自分がそう思っているにすぎないってことなんだろうか。
つまらないということは、ただ自分がそう思っているにすぎないってことなんだろうか。
本当はつまらないことじゃないのに、ただ自分でそう思ってるにすぎないってことなんだろうか。

ただ、自分でそう思ってるだけじゃないよ、僕は本当に生きてることがつまらないんだ。
だって、親はうるさいし、友だちは意地悪だし、生きていて楽しいことなんかちっともないよ、本当につまらないことばかりだよって。

ああ、確かにそれはつまらないなあ。
せっかく生きてるんだから、楽しいことばっかりだったら、どんなにいいかなあ。
でも、どうだろう、つまらないことをつまらないと思ってるのは、やっぱりどこまでも君だよね。
君につまらないことをする親や友だちも、君の代わりにそう思うことはできないよね。
だとすると、いいかい、これを逆から言うと、彼らではない君は、自分で思うことができるということだ。
「自分で思う」ことができるということだ。
それなら君は、つまらないことをつまらないと思わないこともできるはずじゃないだろうか。

もちろん、実際にそれができるようになるのはとても大変なことだ。
でも、思っているのはいつでも自分だって、一番肝心なことを忘れずにいるなら、いつかきっとできるようになるはずだ。
そうなった時は、きっとこう思うだろう。
生きていることはつまらないって、ただ自分でそう思っていたにすぎないなって。

『14歳からの哲学』池田晶子

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