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言志四録

欲について

人は欲がないわけにはいかない。この欲が悪をする。天は人に善なる本性を与え、その上でこれを乱すものとして、欲という悪を付け加えた。天はどうして、初めから欲を与えずにおかなかったのか。はたして欲は、何の役に立つものか。 私が思うのに、欲は生きた...
言葉の力

己を捨てて人にしたがう道

ひもじいときに、よその家へ行って、「どうか一飯めぐんでください。そうすれば、私は庭をはきましょう」と言っても、一飯をふるまってくれる者はない。空腹を我慢してまず庭をはけば、あるいは一飯にありつくこともあろう。これは、己を捨てて人にしたがう道...
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心を正平に

硯箱の墨が曲がっていた。翁はこれを見て、こう言われた。すべて事を行う者は、心を正しく平らに持つように心がけなくてはいけない。たとえば、この墨のようなものだ。誰も曲げようとして摺る者はないが、手の力が自然に傾くので、このように曲がるのだ。いま...
言葉の力

恩を思う

世の人情の常で、明日食べるものがないときは、他に借りに行こうとか、救いを乞おうとかする心はあるが、さて、いよいよ明日は食う物がないというときには、釜も膳腕も洗う心もなくなるという。人情としてはまことにもっとものことであるが、この心は、困窮が...
言葉の力

積小為大

大事をなそうと欲すれば、小さな事を怠らず勤めよ。小が積もって大となるものだからだ。およそ小人の常で、大きなことを欲して、小さな事を怠り、できがたい事を心配して、できやすい事を勤めない。それで、結局は大きな事ができないのだ。大は小を積んで大に...
言志四録

公欲と私欲

人は誰でも善悪の筋道を判別する理性を持っている。それとは別に、感情にって欲というものが顔を出す。理性に合致している欲を公欲といい、理性と衝突する欲を私欲という。感情によって欲が動き出すときに、理性に合致しているかどうかをきちんと分別しなけれ...
言葉の力

唯我独尊

釈迦が生まれたとき天上天下唯我独尊と言ったということを、無法者などが広言を吐いて、天下広しといえども自分に及ぶものがないなどと言うのと同じように、釈迦の自慢だと思うものがいるが、これは誤っている。これは釈迦だけではなく、世界中の誰も皆、自分...
言志四録

準備万端ととのって、やむにやまれなくなって、蕾を破って外に咲き出すのが花である。 『言志四録』佐藤一斎
言志四録

艱難の教訓

薬は、苦味の中から甘味が滲みでてくるものほど、多くの効能があるという。人も艱難辛苦を経験するほどに、深く細かな思考力が自然と滲み出てくるようになる。これが、物事を成就させる力となるのだ。全く良薬と同じ効能である。 『言志四録』佐藤一斎
言葉の力

救い

本当のことというのは、本当だと認められるから本当なのであって、本当だと認められないことは本当ではない、ウソである。それで、本当ではないウソのことというのは、認められるのではなく信じられることになる。人がそれを信じるのは、それがウソだからであ...